目覚ましの音が鳴る前に、ふっと目が覚める。
まだ暗い部屋の中、静かに新しい一日が始まる。
40代になって、ようやく早起きの習慣が身についた。
いや、正確には何度も試みてはいたのだけれど、すぐに挫折し、夜型の生活へと舞い戻っていたのだ。
だが今回は違った。
深夜に仕事をし、気づけば朝日が昇るような生活を、ついに手放すことができた。
それによって得られたものは計り知れない。
生活改善の最初の一歩は「早起き」
眠れない。
だから深夜も仕事をする。
仕事をするから、ますます眠れなくなる。
そんな悪循環を、何年も続けていた。
そして、ある日、決定的な出来事が起こった。
心が立ち上がれないほどのダメージを受けたのだ。
このままではいけない。
環境を変えるのではなく、自分を変えなければならない。
そう思い立ち、生活の再設計を図った。
その第一歩目が、早起きだった。
夜型のフリーランス生活
フリーランスになって10年。
ウェブエンジニアとして、自由な働き方を手に入れた。
数年前、田舎へ移住し、オンラインミーティングが当たり前になったことで、働く環境はむしろ向上した。
仕事は安定しているはずだった。
しかし、ある出来事がきっかけで、メンタルが保てなくなった。
それまで「普通」と思っていた状態が、実は常に睡眠不足の中で成り立っていたのだと気づいた。
眠れないから仕事をし、仕事をするから眠れない。
深夜、暗闇の中でパソコンを眺め、気づけば外が白んでいる。
ひどいときは、睡眠時間が2〜3時間。
昼に眠くなっても、頭の中は散らかったままで、まともに眠ることすらできなかった。
無理やり遊びに行って、限界まで体を動かし、気絶するように眠る。
遊びの間も仕事のことを考えているので心からは楽しめない。
そんな日々を繰り返していた。
だが、メンタルの崩壊がきっかけで、その生活を見直そうと決意した。
悪いことが起きると、頭の中で何度も反芻してしまう。
それも結局、自分の生き方が引き起こしている。
「自分が変われば、世界が変わる」
そう信じて、行動に移した。
早起きをするために
もちろん、早起きの効能は知っていた。
「早起きは三文の徳」なんて言葉もある。
だが、夜寝られないまま無理に朝起きても、長続きしない。
まずは「早く寝ること」から始めた。
最初は違和感があった。
しかし、夜22時にはパソコンを閉じ、スマホも触らないようにした。
意思の力だけでは続かないとわかっていたので、物理的に距離を置いた。
仕事部屋にスマホもパソコンも置き、寝室には持ち込まない。
最初は不安だった。
連絡が来ていないか気になった。
だが、実際には何の問題もなかった。
寝る1時間前には間接照明に切り替え、本を読み、静かに過ごす。
最初は寝付きが悪かった。
しかし、しばらくすると雑念が消え、ぐっすりと眠れるようになった。
「寝るのが苦手」だと思っていたが、それは単に「自分で寝ないようにしていた」だけだったのだ。
朝型生活を始めたのは冬だった。
だから、朝起きると外は暗い。
最初はつらかったので、まずは8時起きを目標にした。
それに慣れたら7時半、7時……と、少しずつ時間を早めていった。
2ヶ月後には、5時台に起きる生活が定着した。
今は22時半には布団に入っている。
睡眠時間も色々試したが、7時間ほどの睡眠が自分には合っているようだ。
早起きで変わったこと
朝の時間に余裕が生まれた。
やりたいことをする時間ができた。
しっかりと睡眠をとることで、頭の働きも良くなった。
「やらされる」から、「自らやる」へ。
行動の意識が変わった。
やるべきことがあるというのは、ありがたいことだ。
しかし、余裕がないと、その感謝すら忘れてしまう。
仕事がしっかり片付くことで、プライベートも充実した。
自己肯定感が上がり、ネガティブな感情に振り回されることも減った。
以前は、妻と出かけていても、頭の中では仕事のことばかり考えていた。
「この時間を仕事に使えたら、楽になるのに」
そんなことばかり思っていた。
しかし、今は違う。
朝のうちにやるべきことは片付いている。
だから、外出も心から楽しめる。
以前の自分は、常にピリピリしていたのだろう。
そんな状態で接していたのだから、周りにも迷惑をかけていたはずだ。
早起きで世界が変わる
「なんでもっと早く朝型生活にしなかったのか」
そう思うこともある。
しかし、これまでの生活があったからこそ、気づけたこともある。
40代になって、今さらではある。
だが、周りを見ていると、かつての自分と同じように苦しんでいる人は多い。
フリーランスだからこそ変えやすかったのは確かだ。
それでも——
生活を変えるだけで、こんなにも世界が違って見えるのだ。
だから言いたい。
「早起きは、いいぞ」と。
